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大西郷という虚像 原田伊織

西郷隆盛に対するネガティヴな評価はタブーとされる雰囲気がありますが、ボクらが教えられる歴史は、全てある時期を一方的に描かれているものだとあらかじめ感じました。

事実を積み上げれば見えてくる新たなる真実も全ては嘘と言い切れず、人間の二面性や隠されたり作られた歴史もそれは真実と言えるのではないかと思いました。

西郷をもう一度自分なりに検証して改めて評価していかなければならないと思いました。

 

大西郷という虚像

大西郷という虚像

 

 

グロテスク 桐野夏生

主観と客観のギャップや思い込み、勘違いなどにより、自分と自分以外の人との真の理解は不可能だと思い知らされるような内容でした。

モデルとなった事件をベースに、それから大きく飛躍した展開と結末に向けてのストーリーの収束が、長編でありながらも飽きさせない理由だと感じました。

単純に奇妙な人間とだけでは解されない、まさに共感と嫌悪感を抱かせるようなそれぞれの人物像を作り上げる桐野夏生はさすがだと思いました。

 

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

 
グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

 

 

 

 

金色機械 恒川光太郎

SF的な設定でありながら、歴史的な背景もしっかりあって、面白く一気読みできました。
 
結果的に遥香の目的が達成されるストーリーには裏切られず、最後まで好奇心をもって読み進めることができました。

大きな世の中の出来事であっても、時が過ぎれば、ただの昔話となるという、流れる時間的感覚がさっぱりした読了感に繋がるのだと思いました。

 

金色機械 (文春文庫)

金色機械 (文春文庫)

 

 

映画 海街diary 是枝裕和

風景の場面が心地よかったです。


娘が漫画で読んで良かったから映画でも見たい、ということで娘と一緒に観ました。


3姉妹とすずのキャスティングはこれ以上ないと思えるほど適役でした。それぞれのイメージそのままの役でと思えました。


映画のストーリーを楽しむというより、それぞれの役者を観たという印象で、4姉妹それぞれの個性が見え面白かったです。

 

 

切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 中山七里

一人の人間という視点から見れば、臓器移植を受けても、その後の人生が素晴らしいものになるとは限らないということでしょうか。


脳死を人の死とするのかという判断は、人それぞれで、特に日本人においては、倫理観からまだまだ死とは認められないのが現実だということは理解できます。


それぞれの立場を自分に置き換えた時、一概に判断できるものではなく、それぞれの立場でその瞬間に受ける感情を優先して判断していくべき問題と感じました。

 

切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 (角川文庫)

切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 (角川文庫)

 

 

死にたくなったら電話して 李龍徳

腑に落ちないのですが面白く読めました。


人は他人にどれだけ影響を与えることができるのかという点で、結果的に影響を受ける側の心の持ちようだとも感じました。


何年一緒にいても分かり合えない仲もあれば、初美が徳山に感じたように会った瞬間からシンクロする仲もありますが、当初の警戒心が強いほど警戒心がほぐれた時の反動は強く、それは洗脳や宗教にも利用され得る手法だとも感じました。


他人同士の思考が同調していく過程には、共通の欲求が必要でもあり、それが死という点が文学的でもあり、個人的にはモヤモヤ感が残った部分でもありました。

 

死にたくなったら電話して

死にたくなったら電話して

 

 

ボラード病 吉村萬壱

小説におけるリアリティを追及しても、作者の主観から脱却する客観は不可能であるとすれば、フィクションとしての物語を追及するべきと思わされました。


舞台のモデルを探しながら読みましたが、読み進めるうちにその思考は無意味であると気づきました。


何も感じない読了感覚でした。

 

ボラード病 (文春文庫)

ボラード病 (文春文庫)

 

 

麒麟の舌をもつ男 田中経一

料理をテーマにした小説であるため、当然に現代料理がストーリーの主軸と思っていましたが、読み終えたとき、「永遠のゼロ」の読了感によく似ていることに気づきました。

戦争に翻弄されながらも、料理を通じて国に貢献しようとして裏切られますが、そのまま事切れてしまわず、自らの信念を後世に託そうとする直太郎の姿勢には感動させられました。

確かに絶対音感があるように、麒麟の舌をもつ人間もいると思われ、その能力は遺伝するという構成には納得できるものがありました。

久しぶりにどっぷり浸かれる小説に出会い、読了後の感動から現実世界に戻りたくないという余韻を楽しむことができました。

 

麒麟の舌を持つ男

麒麟の舌を持つ男

 

 

映画 血と骨

人は何のために生きるのか考えさせられました。また、人が人を理解することの難しさを感じました。

 

不器用な人ほど、自分の追い求めることに矛盾が生じたとき、一方を否定できずに、それぞれに対して肯定することによって、俊平のような二面性が生まれるのではないかと思いました。

 

矛盾していることを同時に行うところに人間らしさがあるのだと思いますが、それを理解でない周りの人間は離れていくのだと思いました。

 

お金を追い求めても、人間関係が崩壊していれば、最期は寂しいのだという典型のような話ですが、本人がそれでよいのだと思えばそれでよいし、納得できればそれで良いのだと思いました。

 

久しぶりに観ましたが、出演者の圧倒的な演技に引き込まれました。

 

血と骨 通常版 [DVD]

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スリーパー 楡周平

実際の出来事を踏まえた構成で、水面下の各国の諜報活動とアメリカの北朝鮮への牽制が実は単純構造だというストーリーが面白かったです。

微妙な駆け引きの中で戦争が回避されており、ボクらはそれらを知らずに生活しているという点で本当の平和ボケを感じました。

楡周平っぽくない内容の小説でしたが、ハリウッド映画を見るような感覚で読むことができました。

 

スリーパー (角川文庫)

スリーパー (角川文庫)

 

 

くちぬい 坂東眞砂子

ロスジェネ、ゆとりなど、世代によって独特な思考があるように、団塊世代前後にも特徴的な傾向があるように思います。

特に、昭和一桁年生まれの人びとは、思春期前後の終戦によって価値観の崩壊を経験したことにより、自分たちが日本を作り上げなければいけない使命感で生き、新たな価値観を生んだと言われますが、今でもそれを必死に守ろうとしているように思えます。
それらが今の日本の、資産的、社会的な歪さを生んだように思います。


しかしその、例えば、終身雇用や持ち家神話、東京至上主義、年金制度は崩壊したにもかかわらず、それらにボクらも縛られていることに腹立たしさを感じます。
本書の違和感は、読了後も続きますが、久々に考えさせらたれ小説でした。

 

くちぬい (集英社文庫)

くちぬい (集英社文庫)

 

 

楽園のカンヴァス 原田マハ

絵画がテーマで、ずっと読みたいと思っていた小説でした。ルソーやピカソ、美術館等の基礎的理解を深めつつ、スマホ片手に読み進めました。

写真が誕生してから絵画は芸術としてさらに発展することを迫られますが、それによる前衛的、近代的と言われる画家たちの苦悩が理解できました。

また、周囲の評価によって作品の価値が変化する点において、絵画を見る者の感性が画家の感性に共鳴できなければ、その作品の評価は正しくできないことにも気付きました。

画家を理解するには、ただその作品を見続けることというオリエとティムの会話には絵画鑑賞の真髄を感じました。

話題となる本にハズレはないと確信できる一冊でした。

 

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

 

 

キングダム 新野剛志

立場を変えた視点から他人を見れば、その人の印象は変わるのだと感じました。


真嶋は一見極悪人ですが、真嶋の住む世界に踏み入ってみれば、筋が通っているとも思え、結局、既得権益を守ろうとする側対、若者という構図は、裏表関係ない社会の基本的構造と理解しました。


確かに、組織に立ち向かうのはいつも若者で、そしてその大半は散るところが美しいのだと思います。


しかし、真嶋の美しさも、一般社会から見たら、一人のアウトローに過ぎないという点が、裏社会を垣間見る感じで面白かったです。

 

キングダム

キングダム

 

 

Iターン 福澤徹三

 サラリーマン社会とヤクザ社会の対比が面白かったです。


組織からの視点で見たとき、擬似家族という前提で構成されるヤクザ組織は、資本主義上の会社組織と比べて、むしろ人間としては健全な組織なのではないかとも思いました。


お金の流れからしても、会社は上から下へ、ヤクザは下から上へと、会社とヤクザは全く逆ですが、ボクらは、国に税金として吸い上げられている点では、大きい枠で言えば、ヤクザ組織と同じシステムの中で生きているのだとも感じました。


また暴力行為を働く前提でのヤクザは排除すべき存在ですが、わざわざ悪者ですよと看板をあげている方が、何でもありの半グレ集団よりも悪ではないという見解は面白いと思いました。

 

Iターン (文春文庫)

Iターン (文春文庫)

 

 

映画 パージ

恐怖映画には2種類あって、一つは心霊やゾンビなど未知の未確認への恐怖があって、二つ目は、人の恐怖だと思います。
心霊やゾンビのホラーは、現実感がない分、リアル感が出せなかったら、一気に興ざめしていまいますが、人の恐怖は、リアルな分、観るほど増幅されていく感覚になります。


人の裏面は誰にでもあるのかもしれませんが、本作のように、それが野性的に露見する社会システムが作られれば、人の社会性は簡単に崩れて、すぐに北斗の拳の世界に落ちていくのではないか思いました。

 

設定が斬新でわかりやすい内容でした。その分、展開が予想できてしまうところや、やや強引なストーリーがやや残念でした。

中二娘と観ました。傷口のシーンなど少し怖いところもあったようですが、終始楽しめていたようです。