カイコタンの読書ブログ

読書したり映画を観て感じたことをつづっていきます。

一千兆円の身代金 八木圭一

このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞ということで、タイトルにも惹かれて読みました。国家相手の身代金要求はフィクションでしかあり得ませんが、仮に考えたとき、国の対応が日本らしいと感じました。

確かに悲観的な日本の将来に対して子供たちにその罪はありませんが、現在の社会保障を崩壊させることもできないとすれば、少なくともボクらの世代は現状の世代間格差にもっと怒るべきだとも感じました。

政治的な社会的なパワーは怒りだとボクは思うので、本書はストレートにそれが表現されている点で心地よく読み進めることができました。

 

 

一千兆円の身代金 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

一千兆円の身代金 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

 

 

小暮荘物語 三浦しをん

昨今人間関係の希薄化が指摘され、それが引きこもりやニート不登校の原因ともされていますが、人間関係の希薄化とは何なのかを考えてみれば、現代社会においては、希薄な人間関係の中でも生活できる経済的な豊かさがあると感じています。昔は引きこもるほどの余裕がなかったということなのでしょう。 

ぼくは、決して現代社会は人間関係が希薄だとは思いません。むしろ、豊かであるがゆえに、電波を介して繋がることによってますます濃密になっているとも思います。 

つまり隣人の顔すら知らないとはいっても、それによる弊害は特になく、時間的な余裕がない分、近い関係は逆に濃くなっていると思います。 
しかし、結局、ぼくらは仕事や家族などの関係を超えた一人の人間としてのコミュニティを求めているのかもしれません。 

小暮荘はボロアパートで、一見住民同士はすれ違いの生活のようにも見えますが、緩い住環境であるがゆえに、他の住民と影響し合っています。 

ありがちな設定ですが、三浦しをん独特な切り口で面白かったです。 

 

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

木暮荘物語 (祥伝社文庫)

 

 

ラフ・アンド・タフ 馳星周

読了後の切なさや哀しさは馳星周独特で、ボクはそれを求め、期待しているから馳星周を読むのだと再確認しました。 

 

このあとどんな結末が待っているのかは、馳ファンなら感じることができますが、それを先読みせずに、馳ワールドにどっぷりと浸かるのがよいと思いました。

 

ラフ・アンド・タフ (講談社文庫)

ラフ・アンド・タフ (講談社文庫)

 

映画 3‐4×10月

寄った構図から、カメラが引いていくと周囲の状況が徐々に掴めていくというカメラ-ワークが多用されており、それが次の驚きやショックを生み、最後まで飽きさせない作品となっています。

 

バイオレンスとユーモアのがうまく融合すると、それぞれが相乗効果を生み、よりバイオレンスに、よりユーモアに感じる効果は面白かったです。

 

そういった意味では、北野武監督の当時の心理を投影した作品なのではという視点からもこの映画の深さを感じることができます。

 

さらに言えば、ボクはまず映画を見てから他人の評価を見るようにしていますが、ストーリー以上に、北野武監督の「人を楽しませたい」というエンターテナーとしての真髄を感じました。

 

3-4x10月 [Blu-ray]

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学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話 坪田信貴

話題本というだけで妻が購入したものをボクもついでに読みました。

 
世の中こういう娘もいるんだと思えました。 


偏差値至上の社会から目を背けることはできませんが、後天的な単なる勉強で人生変えられるというのは希望だと感じました。

 

 

死にたい老人 木谷恭介

ボクが83歳になることは想像できません。


筆者は自らの老化に絶望し、断食により自死を図りますが失敗します。


本能であるはずの食欲を抑えるのは人間の理性ですが、理性である断食によっては自殺できないという点で、結局、自らの断食死は土中における即身仏とは全く異なるものだと思いました。

 

死にたい老人 (幻冬舎新書)

死にたい老人 (幻冬舎新書)

 

 

こう観ればサッカーは0-0でも面白い 福西崇史

サッカー素人のボクはゴールシーンばかりに目がいきますが、守備における組織的な動きや攻撃時の献身的な動きの重要性がわかりやすく、これまでとは少し違った視点でワールドカップを楽しめるのではないかと感じました。

身体能力に壁がある日本人は、組織力を高めるのが手っ取り早い戦略なのでしょうが、世界の強豪と肩を並べるには、どうしても個の力がいるという解説はわかりやすかったです。

 

 

雀蜂 貴志祐介

スズメバチ対人間の格闘ですが、スズメバチの恐怖は、その攻撃に躊躇がないというところだと感じました。 


それは、第二次世界大戦中の日本の特攻の様で、我が身を抛つ攻撃には、恐怖が先行してしまい、優位的な状況でも自らそれを崩壊させてしまうという心理が面白かったです。 


しかしただのスズメバチ対人間の話に終わらなかった点は、やはり貴志祐介であって、終盤夢子の登場あたりからはミステリーとしても面白く読めました。

 

ボク的にはいくつかの謎は残りましたが、それらも複線として散りばめられており、ボクが気づかないということだけなのでしょう。

 

雀蜂 (角川ホラー文庫)

雀蜂 (角川ホラー文庫)

 

蔦重の教え 車浮代

小説仕立ての自己啓発本ですが、蔦屋重三郎が生きた時代を細かな描写と、現代との対比によって面白く、読みやすい内容でした。 

やはり自己啓発の内容は、その一つ一つは難しいことではないのですが、それを継続して続けることが難しいのだと思いました。 


何故継続させることが難しいのかと考えると、結局人は体験から得たことでしか真に学ぶことはできないのではないかとも感じました。

 
そう考えると、気持ちの良い環境に身を置いて、ただ日々過ごすだけになったとき、そこに充実感や楽しみを見出すことができなければ、真に得るものは何もないのだと思いました。 


人のパワーの源である怒りと悔しさを上手にコントロールしていけたらよいと思いました。

 

 

蔦重の教え

蔦重の教え

 

 

 

灰色の犬 福澤徹三

20代とヤクザの苦悩と警察内部の個人的な事情が絡まって面白かったです。福澤徹三は難しい言葉や回りくどい言い回しがない文体なので、どんどん読み進めることができますが、本書は特に後半、目まぐるしく視点が変わり、どういう結末を迎えるのか気になり、一気読みでした。 

 
年齢や職業や立場を超えて、それぞれが抱える不安や苦悩は、その本人にとっては深いものであっても、他者がそれらを本当に理解することはできないのだと思いました。 

 
自分以外の人のことを思う気持ちは、そこに良心がなければ、例え家族であっても真実には分かり合えないことがあるのだとも感じました。

 

灰色の犬 (光文社文庫)

灰色の犬 (光文社文庫)

 

 

月島慕情 浅田次郎

短編が7つおさめられていますが、タイトルにもなっている「月島慕情」がぼく的には一番良かったです。 

浅田次郎にはいつも一瞬でその小説の中に入らされます。 
意外とキーワードが前半部分に出てくるためにその時代背景や設定が分かりやすいのではないかと思いました。 

そういう意味では、「雪鰻」も前半部で大まかな部分が分かり丁寧に中盤が描かれてきっちり結末が描かれている点で、分かりやすく深い浅田次郎の世界となっていて安心して読み進められました。 

心地よい読了感は裏切られない作家の一人です。

 

月島慕情 (文春文庫)

月島慕情 (文春文庫)

 

 

映画 ザ・ボーイ

中二の娘と観ました。

照明の当たり方で、人形であっても表情が変わったように見える手法は、能のようでした。

恐怖の裏側には悲しみのストーリーがあって、それを引き立たせるには、美しいものを取り入れるという、ボクなりの恐怖映画の評価の基準をすべて満たす映画でした。

ローレン・コーハン演技も良かったので、ストーリー以上に楽しめました。

 

 

映画 ソナチネ

ところどころ響く銃声の音が、ユーモアからシリアスへの転換のアクセントとなっています。色の対比や遠景、近景のバランスから読み取れる状況は、計算しつくされて撮影されているのだと思いました。


やはり映画は、ストーリー以上に、映像の表現であることが十分に踏まえて撮影されていなければならないのだと思いました。

 

より深く理解するには、何度か繰り返して観ることが必要だと思いました。

 

ソナチネ [Blu-ray]

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映画 傷だらけの悪魔

学校のクラスのごたごたを、当事者以外が真に理解しようとすれば、要点を抽出して、話を単純化してしまいがちですが、複雑な構造のいじめについては、そっくりそのまま理解しなければならないと思いました。

そのためには、そのクラスに所属しなければ難しいのだと思いました。

さらにそのクラスに所属していたとしても、その多くは傍観者になってしまい、本作では、いじめの当事者よりも、その傍観者を悪だとする点に明快さがありました。

学校のクラスの問題は、人間の社会全般にも当てはまり、様々な問題に対して、外部の人間がその問題を理解しようとすれば、単純化する必要があり、単純化することで、複雑化する問題ほど真の理解には至らないのだと思いました。

 

中一の娘と観ました。

 

 

父を葬る 高山文彦

読了後に感じるやるせなさは、高千穂文化でボクも生きていたからだと思いました。

父親の闘病と母の看病、先祖、家族、自分がすべて高千穂の世界から一人称で語られています。ただの闘病記ではなく、高千穂の真実や苦しみの歴史が詰まっています。

会話の語尾に含まれる、高千穂方言独特のニュアンスも伝わってくる高山氏の文体には、焼酎の匂いすら感じられ、無性に帰りたくなってきます。

 

父を葬(おく)る

父を葬(おく)る