カイコタンの読書ブログ

読書したり映画を観て感じたことをつづっていきます。

僕たちの戦争 萩原浩

新しい環境に順応しようとしたとき、それまでの価値観に縛られない柔軟性が必要と思いますが、現代と第二次世界大戦中の若者がタイムスリップすると、どう順応していくのかという点で面白く読めました。

現代人の健太が特攻までに至る心理は、結局愛する者を守りたいというものになっていますが、逃げ出せない土壇場であれば、そういう自己美化的な思考によってしか救われないのではないかとも感じました。

ベタな設定であっても飽きさせないのは主人公の心の変化が丁寧に描かれているからなのだと思いました。

 

僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

僕たちの戦争 新装版 (双葉文庫)

 

 

二郎は鮨の夢を見る

寿司職人の修行について、ホリエモンの考え方は理解できますが、

職人に適性があるとすれば、目の前にある自分の仕事に対し、誠実で妥協しないということだと思いました。

 

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職を決める時に、目の前に職人の世界があったからと言っても、誰もがそこに没入してその技が極められるかと言えばそうではないということはわかります。


世の中が職人の復権を目指すなら、職人自体に注目するのではなくて、ボクのような素人でもその仕事を評価できる感性を持たないとダメなのだと感じました。


日本人からの視点ではないとこが終始面白かったです。

 

 

神の島 沖ノ島 藤原新也 安部龍太郎

写真に力があるとすれば、専門家よりも専門知識のない一般人の方が単純に何かを感じられるのだと思います。心を揺さぶられる写真には、被写体や撮影テクニックだけでは伝わらないものが込められているような気がします。 
そういう意味では、高名な写真家の信念はそれほど複雑なものではないように感じられます。 

本書は、沖ノ島を巡る藤原新也氏の写真と安部龍太郎氏の短編が収められています。 

圧倒的な歴史を前にすると、興味以上に恐怖を感じるのは、そこに確かな人の想いががあるからだと思いました。また、己の小ささを感じ、歴史に潰される感覚からの恐怖とも感じました。

 

神の島 沖ノ島

神の島 沖ノ島

 

 

破獄 吉村昭

脱獄を繰り返した男の半生を描いた小説でした。特に昭和初期までの監獄からの脱獄は牢も看守の質も未熟で、まさに人知と体力の闘いの様子でした。 

用意周到に脱獄する者は、ハンニバル・レクターのように知能が高いだけでなく体力も備えておく以上に、脱獄に向けての異常な執念が必要でした。 

その執念は看守への怒りから発しているとすれば、動機が屈折しているほど周囲には理解されず孤独感は増すと感じました。 

しかしそうであればこそ、自分を理解してくれていると感じた者を深く信頼し、それが執念を軟化させるきっかけになるのだと思いました。 

一人で怒ったり悩んだりするのではなく、信頼できる人に自分を解放していく方法は、人の心理的なバランスを保つ手段としてやはり有効なのだと確認しました。

 

破獄 (新潮文庫)

破獄 (新潮文庫)

 

 

よもぎ学園高等学校蹴球部 松波太郎

精神論を唱える女性のサッカー部監督は面白い設定でしたが、時間軸が飛躍する点は、エピローグのエピローグのような感覚で新しい感触でした。

 

よもぎ学園高等学校蹴球部

よもぎ学園高等学校蹴球部

 

 

映画 日本の自転車泥棒

震災前の岩手沿岸、福島が、美しく寂しく写されています。


杉本哲太の自転車に乗る姿勢がきれいで、自然の中を自転車で走り抜けるシーンはとても気持ちよく見ることができました。

 

日本の自転車泥棒 [DVD]

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教団X 中村文則

人の個人的な思考の世界と公の行動の境界線を行ったり来たりする感覚の小説でした。


同じように原始的で個人的な閃きや発想があって、単なる思考から思想へと発展する流れは同じでも、それを人に伝えて発展していく段階で、道は大きく変わるのだと思いました。


これまでの宗教の教祖は神格化する傾向がありましたが、結局松尾のように、大衆の中に入り、そこに居続ける日本的仏教の形態の方が、やはり日本人には受け入れられやすい宗教観のではないかとも感じました。

 

教団X (集英社文庫)

教団X (集英社文庫)

 

 

一刀斎夢録 浅田次郎

武田鉄矢新選組が嫌いだということですが、それは龍馬を軸に見てのことだと思います。 
薩長の史観教育によれば、幕府側の新選組は悪ということになりますが、その理論で言えば、国に戦いを挑んだ西郷も悪となるところ、そうではないところに何かが潜んでいるということでしょう。 

本書を読み終え、西南戦争を教科書的に理解していた自分を恥ずかしく思いました。 
西南戦争となるまでの名称の変化や西郷復権の経緯を見ると、確かに、西郷と大久保企てだ一大計画であっとすれば腑に落ちます。 

西南戦争における各所の戦いばかりを追いかけ、西郷軍の愚策に疑問を抱かなかった現代人のボクでも、完全に西郷と大久保の術中にはまっていたということでしょうか。 

さらに本書は、ボクがそれまで抱いていた、斎藤一の印象、新選組のイメージを大きく変えるきっかけとなり、幕末に関しての新たな視点をもつきっかけとなる予感です。 

続けて、浅田次郎新選組を読んでいきたいと思います。

 

一刀斎夢録 上 (文春文庫)

一刀斎夢録 上 (文春文庫)

 
一刀斎夢録 下 (文春文庫)

一刀斎夢録 下 (文春文庫)

 

 

ダイナー 平山夢明

食べ物を主軸とした小説は、読者に食べてみたいと思わせる表現ができるかというのが一つの基準であるとすれば、本書のボンベロのハンバーガーには強烈に惹かれました。 

一方で、匂いや食感が刺激されるとすぐにグロい表現によって食欲が減滅させられる繰り返しは、後半若干飽きました。 

とは言っても、完全に絶望的と思われる状況から、機転を利かすことによって未来を切り開くカナコのたくましさは羨ましく、しかしそれは生きることへの強い執着というよりただの偶然の積み重ねだという点は気持ち良く読めました。

 

ダイナー (ポプラ文庫)

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あやし うらめし あな かなし 浅田次郎

怪談というものでもなく、少し不思議な話を集めた短編集でした。 


あまり面白い!というものはありませんでしたが、あえて言うなら、一編目の「赤い絆」がありがちな話しでまとまりが良かったと思いました。 

 

映画 あん

印象に残る演技をするなと思いながら見ていた女子中学生が内田伽羅ということを知らないまま観ました。
芸能一家で育つとああなるのかと思わずにはいられない魅力を感じました。

樹木希林の演技も、永瀬正敏も適役で良かったです。

比較的シンプルなストーリーですが、ハンセン病が絡むあたりは、題名からは想像できず、意外性に魅き込まれました。

娘と観れる映画だと思いました。

 

 

 

死に金 福澤徹三

余命わずかとなったとき、お金を抱えたままでは死ねない、相続させたい人間もいないというときの男の心境は想像できませんが、そのお金をあてにして、周囲の人間が必死に動く様が面白かったです。 

楽して莫大なお金を手にしたいという気持ちより、無心に好きなことをした結果、お金が集まってくるのだという結末に救われた感じがしました。 

確かに、無心であることや純粋であることは尊いという価値観でなければ、世渡り上手やテクニシャンがのさばる世の中では無茶苦茶になりますので、その道筋が示されたのは良かったです。

 

死に金 (文春文庫)

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人生相談。 真梨幸子

それぞれが独立した短編のような出だしですが、徐々に共通する人物が登場するに従って、物語の軸が見えてくる感じでした。

同じ一つの出来事でも、関わり方や立場が変われば、全く別の面が見えてくると改めて感じました。

 

人生相談。

人生相談。

 

 

映画 ぱいかじ南海大作戦

食料が豊富にあると、人はおおらかになるのだと思いました。

これも原作を読まずに映画を観ました。
 

トーリが明快であるため思考は発展しませんが、時間つぶしには良いと思いました。

 

ぱいかじ南海作戦 [DVD]

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映画 百瀬、こっち向いて。

解釈は観るものに委ねるという姿勢の映画は考えさせられます。

原作は読んでいませんが良いものなんだと思われ、映画がより具体的に良い作品になったのだと思いました。

 

実際観るまでは敬遠気味でしたが、心が揺り動かされる場面がいくつもありました。

それぞれがよく演じようとするのは、出演者の若さゆえの相乗効果のようにも思え、撮影現場も良い雰囲気であったのだろうと想像させられました。

 

心動かされる作品は良い映画であり、むしろエンターテイメントはそうでなければならないというのはボクの基準ですが、起承転結のはっきりした作品よりも、このような作品をボクは好きなのだと改めて感じました。

 

百瀬、こっちを向いて。