カイコタンの読書ブログ

読書したり映画を観て感じたことをつづっていきます。

僕たちの戦争 萩原浩

新しい環境に順応しようとしたとき、それまでの価値観に縛られない柔軟性が必要と思いますが、現代と第二次世界大戦中の若者がタイムスリップすると、どう順応していくのかという点で面白く読めました。現代人の健太が特攻までに至る心理は、結局愛する者を…

二郎は鮨の夢を見る

寿司職人の修行について、ホリエモンの考え方は理解できますが、 職人に適性があるとすれば、目の前にある自分の仕事に対し、誠実で妥協しないということだと思いました。 www.j-cast.com 職を決める時に、目の前に職人の世界があったからと言っても、誰もが…

神の島 沖ノ島 藤原新也 安部龍太郎

写真に力があるとすれば、専門家よりも専門知識のない一般人の方が単純に何かを感じられるのだと思います。心を揺さぶられる写真には、被写体や撮影テクニックだけでは伝わらないものが込められているような気がします。 そういう意味では、高名な写真家の信…

破獄 吉村昭

脱獄を繰り返した男の半生を描いた小説でした。特に昭和初期までの監獄からの脱獄は牢も看守の質も未熟で、まさに人知と体力の闘いの様子でした。 用意周到に脱獄する者は、ハンニバル・レクターのように知能が高いだけでなく体力も備えておく以上に、脱獄に…

よもぎ学園高等学校蹴球部 松波太郎

精神論を唱える女性のサッカー部監督は面白い設定でしたが、時間軸が飛躍する点は、エピローグのエピローグのような感覚で新しい感触でした。 よもぎ学園高等学校蹴球部 作者: 松波太郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/08/26 メディア: 単行本 クリ…

映画 日本の自転車泥棒

震災前の岩手沿岸、福島が、美しく寂しく写されています。 杉本哲太の自転車に乗る姿勢がきれいで、自然の中を自転車で走り抜けるシーンはとても気持ちよく見ることができました。 日本の自転車泥棒 [DVD] 出版社/メーカー: フロンティアワークス 発売日: 20…

教団X 中村文則

人の個人的な思考の世界と公の行動の境界線を行ったり来たりする感覚の小説でした。 同じように原始的で個人的な閃きや発想があって、単なる思考から思想へと発展する流れは同じでも、それを人に伝えて発展していく段階で、道は大きく変わるのだと思いました…

一刀斎夢録 浅田次郎

武田鉄矢は新選組が嫌いだということですが、それは龍馬を軸に見てのことだと思います。 薩長の史観教育によれば、幕府側の新選組は悪ということになりますが、その理論で言えば、国に戦いを挑んだ西郷も悪となるところ、そうではないところに何かが潜んでい…

ダイナー 平山夢明

食べ物を主軸とした小説は、読者に食べてみたいと思わせる表現ができるかというのが一つの基準であるとすれば、本書のボンベロのハンバーガーには強烈に惹かれました。 一方で、匂いや食感が刺激されるとすぐにグロい表現によって食欲が減滅させられる繰り返…

あやし うらめし あな かなし 浅田次郎

怪談というものでもなく、少し不思議な話を集めた短編集でした。 あまり面白い!というものはありませんでしたが、あえて言うなら、一編目の「赤い絆」がありがちな話しでまとまりが良かったと思いました。 あやし うらめし あな かなし (集英社文庫) 作者: …

映画 あん

印象に残る演技をするなと思いながら見ていた女子中学生が内田伽羅ということを知らないまま観ました。芸能一家で育つとああなるのかと思わずにはいられない魅力を感じました。樹木希林の演技も、永瀬正敏も適役で良かったです。比較的シンプルなストーリー…

死に金 福澤徹三

余命わずかとなったとき、お金を抱えたままでは死ねない、相続させたい人間もいないというときの男の心境は想像できませんが、そのお金をあてにして、周囲の人間が必死に動く様が面白かったです。 楽して莫大なお金を手にしたいという気持ちより、無心に好き…

人生相談。 真梨幸子

それぞれが独立した短編のような出だしですが、徐々に共通する人物が登場するに従って、物語の軸が見えてくる感じでした。同じ一つの出来事でも、関わり方や立場が変われば、全く別の面が見えてくると改めて感じました。 人生相談。 作者: 真梨幸子 出版社/…

映画 ぱいかじ南海大作戦

食料が豊富にあると、人はおおらかになるのだと思いました。 これも原作を読まずに映画を観ました。 ストーリが明快であるため思考は発展しませんが、時間つぶしには良いと思いました。 ぱいかじ南海作戦 [DVD] 出版社/メーカー: キングレコード 発売日: 201…

映画 百瀬、こっち向いて。

解釈は観るものに委ねるという姿勢の映画は考えさせられます。 原作は読んでいませんが良いものなんだと思われ、映画がより具体的に良い作品になったのだと思いました。 実際観るまでは敬遠気味でしたが、心が揺り動かされる場面がいくつもありました。それ…

幕末 戦慄の絆 加治将一

南朝革命論の流れで読みましたが、やはり幕末を南朝革命という視点から見た時のすっきり感を感じられました。和宮の左手がないという切り口から、和宮すり替え論に発展し、旭形亀太郎、有栖川宮熾仁、出口王仁三郎と続けば、読み終えるまでは抜け出せない加…

敵討 吉村昭

現代のように携帯電話や気軽に写真を撮ることなどできなかった江戸時代に仇を探すだけでも相当な苦労があり、結局見つかった時にはお互い老人ということもあったとすれば、仇を何十年も追い続けるモチベーションを保ち続ける裏にはどういう心理があるのか、…

砂の王国 荻原浩

ホームレスが新興宗教をつくって再起を図るという内容です。 はじめから教祖のカリスマ性や深い教義の解釈があるのではないという手探りの過程が面白く感じました。 しかし信者が増えることにより、信者自身が教義を深く読み、運用し、教祖のカリスマ性が増…

ガラパゴス  相場英雄

ボクらロスジェネと呼ばれる世代の働き方や現代日本の過酷な社会システムが描かれた小説でした。確かに、日本は戦後復興を遂げ、高度経済成長期にがんばった日本人は素晴らしいと思いますが、そこから権益の守りに入ってしまったのでしょうか。バブル崩壊の…

映画 野火

小説は高校生の頃に読んでいました。細かな内容は忘れてましたが、ストーリーは観ながら思い出しました。 これが真実かどうかはわかりませんが、当時の雰囲気はリアルです。 野火 [DVD] 出版社/メーカー: 松竹 発売日: 2016/05/12 メディア: DVD この商品を…

花渡る海 吉村昭

人は置かれた環境の中でベストを尽くそうとするのが自然な姿なのだと思いました。最後は運が影響しますが、あくまでベストを尽くさなければならないのだと思いました。久蔵が漂流してロシアで過ごした期間は数年であっても、その激動を生き抜いたということ…

すべての教育は「洗脳」である 21世紀の脱・学校論 堀江貴文

ホリエモンの教育に対する考え方は、本質を捉えすぎて、特に団塊の世代以上には受け入れられないと思いました。 ボクは、教育は社会に平行して適合しなければならないと思っていますが、現状では、ホリエモンのいうように、学校は、今でも工場要員の養成所で…

励み場 青山文平

小説において、セリフとセリフの間の描写が多すぎると、リズム感が失われますが、その描写が巧みであるほど、次のセリフの深みが増すという効果が存分に感じられる文体と思いました。青山文平の二冊目でしたが、ボクは青山文平にハマりつつあることに気づき…

映画 二重生活

原作を読んでいませんが、面白い設定で、どのように展開していくのか楽しんで観ることができました。とにかく、門脇麦の演技に夢中になりました。満島ひかりや二階堂ふみ、尾野真千子などに通ずる「覚悟」を感じることができる女優の一人だと確信しました。…

スクラップ・アンド・ビルド 羽田圭介

人は常に思考しながら生きているのだと感じさせられました。 思考を文章で表現すると、一瞬でも多くの分量になりますが、それは映画では難しい、小説ならではの表現なのだと思いました。また、家族というつながりで、愛情だけで介護はできないと思いました。…

映画 エスター

ホラーというジャンルに分類されるのかはわかりませんが、手に汗握る感じを久々に味わえる映画でした。 持ちモノや服装から、序盤に真相が何となくわかりましたが、わかるとさらに恐怖が増すという感じでした。 イザベル・ファーマンの演技はすごいとしか言…

遠縁の女 青山文平

青山文平を初めて読みました。短編ですが、非常に独特と思いました。どの作も終わり方が独特で、余韻の残る読了感でした。特に最初に読んだため印象に残った一編目の「機織る武家」はそこで終わるのかという場面が印象的でした。歴史の考察が深く、薄っぺら…

明治天皇”すり替え”説の真相 落合莞爾

明治天皇のすり替えはあったのか?フルベッキ写真の真相は?ということで、落合氏と斎藤氏の対談を交えながら、それぞれの主張が展開されていきます。すり替えはあったとする点では共通ですが、それが大室寅之祐であったかどうかとか、フルベッキ写真の青年…

分水嶺 笹本稜平

山をベースにした小説は、読んでいるボク自身もまるで山を登っているかのように感じられるかが、面白いかどうか判断できる基準ですが、その点では少し入り辛い感じがありました。 ストーリー重視という感でした。 分水嶺 作者: 笹本稜平 出版社/メーカー: 祥…

映画 UDON

人には、器用な人もいれば、不器用な人もいますが、社会にはそれぞれ居場所があるのだと思いました。 不器用な人は妥協しないというセリフに納得し、一つのものを作り続けるのは不器用な人の方が合っているのだと思いました。一方、器用な人は、妥協をするこ…

ソクラテスに聞いてみた 藤田大雪

人が生きる上で、仕事、人間関係、お金、恋愛、結婚についての悩みはよくあると思いますが、多くの人は悩みを抱えて生きているようにも思えます。 ソクラテスは、よく生きるとはどういうことか、という問いから思考が進みます。 同じ事象でも、視点を変えた…

映画 ロスト・バケーション

一緒に観ていた子供たちは途中で観られなくなるくらいのスリルでした。 泳ぎの苦手なボクから見れば、海に入るということ自体が既に怖いのですが、サメと戦い生き延びるという精神力が素晴らしく、やはり最後まであきらめてはいけないと思わされました。 こ…

君はどこにでも行ける 堀江貴文

今の日本の閉塞感や生きにくさは、将来への不安に直結し、過去の自分の判断が間違いであったのかという自己否定や、家族や社会が悪いのだと、自分は悪くないのだという考えに陥る悪循環にはまります。そんな風に考えるのではなくて、今を生きるのだと、未来…

象の墓場 楡周平

ここ20年くらい、カメラフィルムのメーカーは凄惨な闘いを強いられてきたということはボクにもわかります。 巨大になりすぎた企業は、急激に時代が変化することがわかっていても、大きく舵を切ることができないということなのでしょう。 これまでの事業は…

峠越え 伊藤潤

家康の伊賀越えまでの内容でした。家康と光秀は通じておらず、穴山梅雪は家康に殺されるという、通説を外した内容で面白かったです。 本能寺の変前後について、後世のボクらはダイナミックな裏話を期待してしまいますが、本当の歴史は、本書のように、その場…

言ってはいけない 橘玲

これまでボクも、なんとなくそうではないか、と思っていたことを、本書はデータや資料をもって解説していきます。 すでに学説として確立している事でも、公にすると様々な立場で都合が悪くなり、意図的に伏せられていることが世の中の多くあるのだと思いまし…

映画 ノルウェイの森

原作を読まずに映画を観ました。これまで村上直樹の小説を読みはじめても、なかなか自分の中に入ってこず、完読したことはありませんでしたが、本作は映画ということもあって、ボクみたいに村上初心者には入りやすいのではないかと思ってずっと気になってき…

漁港の肉子ちゃん 西加奈子

他人への無償の愛情は本当にあるのではないかと思える小説でした。 ガサツとも言える肉子の言動に、逆に感動させられるのは、そこには純粋さしかないからと思いました。 人に感動を与えたり、他人を動かすには、一見すると可笑しくも見える純粋さが必要だと…

世界の大富豪2000人がこっそり教えてくれた3週間で人生を変える法 トニー野中

自己啓発のプログラムとして、実践してみることで自身の考え方が変化していくことが実感できました。 ボクはこれまで、身に起きることすべてに先手を打つこと、何事にもベストを尽くすことを信念として実践してきました。 そうすることによって、物事に追わ…

七つの金印 赤石散人

漢委奴国王印偽物説による小説ですが、金印自体を偽物とするのではなく、現在国宝とされているのは模造品であり、本物は別にあるという内容です。出自の検証や、それぞれの考察の変遷に妙なリアル感があります。今となっては、金印自体の真偽はわかりません…

映画 十字架

中三の息子と中二の娘と一緒に観ることができて良かったです。 大人になったら違う自分が待っているのではなく、今の自分の延長でしかないということを、この映画を通して感じることができたのではないかと思いました。 小説は読んだことがなかったので、読…

映画 日本で一番悪い奴ら

人は環境によって変わっていくのだと思わされました。諸星は己の正義感を屈折させてまで、単にヒーローになりたかっただけだと思いました。市民の安全を守るという大義のために、目の前の犯罪を見逃すという論理は、警察組織の内部ならではの視点ですが、最…

大西郷という虚像 原田伊織

西郷隆盛に対するネガティヴな評価はタブーとされる雰囲気がありますが、ボクらが教えられる歴史は、全てある時期を一方的に描かれているものだとあらかじめ感じました。事実を積み上げれば見えてくる新たなる真実も全ては嘘と言い切れず、人間の二面性や隠…

グロテスク 桐野夏生

主観と客観のギャップや思い込み、勘違いなどにより、自分と自分以外の人との真の理解は不可能だと思い知らされるような内容でした。モデルとなった事件をベースに、それから大きく飛躍した展開と結末に向けてのストーリーの収束が、長編でありながらも飽き…

金色機械 恒川光太郎

SF的な設定でありながら、歴史的な背景もしっかりあって、面白く一気読みできました。 結果的に遥香の目的が達成されるストーリーには裏切られず、最後まで好奇心をもって読み進めることができました。大きな世の中の出来事であっても、時が過ぎれば、ただの…

映画 海街diary 是枝裕和

風景の場面が心地よかったです。 娘が漫画で読んで良かったから映画でも見たい、ということで娘と一緒に観ました。 3姉妹とすずのキャスティングはこれ以上ないと思えるほど適役でした。それぞれのイメージそのままの役でと思えました。 映画のストーリーを…

切り裂きジャックの告白 刑事犬養隼人 中山七里

一人の人間という視点から見れば、臓器移植を受けても、その後の人生が素晴らしいものになるとは限らないということでしょうか。 脳死を人の死とするのかという判断は、人それぞれで、特に日本人においては、倫理観からまだまだ死とは認められないのが現実だ…

死にたくなったら電話して 李龍徳

腑に落ちないのですが面白く読めました。 人は他人にどれだけ影響を与えることができるのかという点で、結果的に影響を受ける側の心の持ちようだとも感じました。 何年一緒にいても分かり合えない仲もあれば、初美が徳山に感じたように会った瞬間からシンク…

ボラード病 吉村萬壱

小説におけるリアリティを追及しても、作者の主観から脱却する客観は不可能であるとすれば、フィクションとしての物語を追及するべきと思わされました。 舞台のモデルを探しながら読みましたが、読み進めるうちにその思考は無意味であると気づきました。 何…

麒麟の舌をもつ男 田中経一

料理をテーマにした小説であるため、当然に現代料理がストーリーの主軸と思っていましたが、読み終えたとき、「永遠のゼロ」の読了感によく似ていることに気づきました。戦争に翻弄されながらも、料理を通じて国に貢献しようとして裏切られますが、そのまま…