カイコタンの読書ブログ

読書したり映画を観て感じたことをつづっていきます。

私の庭 蝦夷地編 花村萬月

権介と茂吉の性格は対照的ですが 、権介はある種超越した性質を持つことから、ボクは茂吉側の視点に立ちました。蝦夷でのサバイバルは想像の世界でしかありませんが、強烈な寒さとアイヌの知恵は、旅を知る花村萬月の経験が裏打ちされた描写だと感じました。…

私の庭 浅草編 花村萬月

権介は蝦夷に渡るのか、私の庭とは蝦夷なのかという視点を持って読み進めるには、圧倒的過ぎる量で、ただ権介を追うことしかできませんでした。 幕末の目まぐるしい社会の変化には一見無関係のように見える権介ですが、結局時代に翻弄されているのだとも感じ…

臆病者のための億万長者入門 橘玲

理論的には理解できて簡単なようでも、実践するには難しいことはたくさんあって、そこには人間の本能が隠されていると理解できました。金融リテラシーを高めるためには、人間の本能と逆行する遅い思考が必要であり、ゆっくり思考できるものだけが巨万の富を…

告白 町田康

熊太郎の、思考と言葉の不一致という、思考の高度さと言葉の幼稚さの対比が切なくなりました。 思弁的な人は破滅していくのか、という視点で読み進めました。 熊太郎にはそこに見栄が混じってアウトローな生き方しかできなくなります。 思考ですべてを知って…

一千兆円の身代金 八木圭一

「このミステリーがすごい!」大賞の大賞受賞ということで、タイトルにも惹かれて読みました。国家相手の身代金要求はフィクションでしかあり得ませんが、仮に考えたとき、国の対応が日本らしいと感じました。確かに悲観的な日本の将来に対して子供たちにそ…

小暮荘物語 三浦しをん

昨今人間関係の希薄化が指摘され、それが引きこもりやニートや不登校の原因ともされていますが、人間関係の希薄化とは何なのかを考えてみれば、現代社会においては、希薄な人間関係の中でも生活できる経済的な豊かさがあると感じています。昔は引きこもるほ…

ラフ・アンド・タフ 馳星周

読了後の切なさや哀しさは馳星周独特で、ボクはそれを求め、期待しているから馳星周を読むのだと再確認しました。 このあとどんな結末が待っているのかは、馳ファンなら感じることができますが、それを先読みせずに、馳ワールドにどっぷりと浸かるのがよいと…

映画 3‐4×10月

寄った構図から、カメラが引いていくと周囲の状況が徐々に掴めていくというカメラ-ワークが多用されており、それが次の驚きやショックを生み、最後まで飽きさせない作品となっています。 バイオレンスとユーモアのがうまく融合すると、それぞれが相乗効果を…

学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話 坪田信貴

話題本というだけで妻が購入したものをボクもついでに読みました。 世の中こういう娘もいるんだと思えました。 偏差値至上の社会から目を背けることはできませんが、後天的な単なる勉強で人生変えられるというのは希望だと感じました。 学年ビリのギャルが1…

死にたい老人 木谷恭介

ボクが83歳になることは想像できません。 筆者は自らの老化に絶望し、断食により自死を図りますが失敗します。 本能であるはずの食欲を抑えるのは人間の理性ですが、理性である断食によっては自殺できないという点で、結局、自らの断食死は土中における即身…

こう観ればサッカーは0-0でも面白い 福西崇史

サッカー素人のボクはゴールシーンばかりに目がいきますが、守備における組織的な動きや攻撃時の献身的な動きの重要性がわかりやすく、これまでとは少し違った視点でワールドカップを楽しめるのではないかと感じました。身体能力に壁がある日本人は、組織力…

雀蜂 貴志祐介

スズメバチ対人間の格闘ですが、スズメバチの恐怖は、その攻撃に躊躇がないというところだと感じました。 それは、第二次世界大戦中の日本の特攻の様で、我が身を抛つ攻撃には、恐怖が先行してしまい、優位的な状況でも自らそれを崩壊させてしまうという心理…

蔦重の教え 車浮代

小説仕立ての自己啓発本ですが、蔦屋重三郎が生きた時代を細かな描写と、現代との対比によって面白く、読みやすい内容でした。 やはり自己啓発の内容は、その一つ一つは難しいことではないのですが、それを継続して続けることが難しいのだと思いました。 何…

灰色の犬 福澤徹三

20代とヤクザの苦悩と警察内部の個人的な事情が絡まって面白かったです。福澤徹三は難しい言葉や回りくどい言い回しがない文体なので、どんどん読み進めることができますが、本書は特に後半、目まぐるしく視点が変わり、どういう結末を迎えるのか気になり、…

月島慕情 浅田次郎

短編が7つおさめられていますが、タイトルにもなっている「月島慕情」がぼく的には一番良かったです。 浅田次郎にはいつも一瞬でその小説の中に入らされます。 意外とキーワードが前半部分に出てくるためにその時代背景や設定が分かりやすいのではないかと…

映画 ザ・ボーイ

中二の娘と観ました。照明の当たり方で、人形であっても表情が変わったように見える手法は、能のようでした。恐怖の裏側には悲しみのストーリーがあって、それを引き立たせるには、美しいものを取り入れるという、ボクなりの恐怖映画の評価の基準をすべて満…

映画 ソナチネ

ところどころ響く銃声の音が、ユーモアからシリアスへの転換のアクセントとなっています。色の対比や遠景、近景のバランスから読み取れる状況は、計算しつくされて撮影されているのだと思いました。 やはり映画は、ストーリー以上に、映像の表現であることが…

映画 傷だらけの悪魔

学校のクラスのごたごたを、当事者以外が真に理解しようとすれば、要点を抽出して、話を単純化してしまいがちですが、複雑な構造のいじめについては、そっくりそのまま理解しなければならないと思いました。そのためには、そのクラスに所属しなければ難しい…

父を葬る 高山文彦

読了後に感じるやるせなさは、高千穂文化でボクも生きていたからだと思いました。父親の闘病と母の看病、先祖、家族、自分がすべて高千穂の世界から一人称で語られています。ただの闘病記ではなく、高千穂の真実や苦しみの歴史が詰まっています。会話の語尾…

敗者復活 藤田宣永

ボクが二十代前半頃の夢は、古本屋とバッティングセンターの経営でした。 j-net21.smrj.go.jp 当時、ボクが理想のモデルとした、お気に入りのバッティングセンターにはマンションが建って久しくなりました。 結局、古本屋にしてもバッティングセンターにして…

黒部の山賊 伊藤正一

面白くて一気読みでした。もちろん黒部には行ったことないのですが、昭和20年代の黒部にタイムスリップしたかのように臨場感が伝わってきました。 素晴らしい景色や心地よい空気感だけでなく、山の厳しさや、結局人間の業が絡む山の生活には、やはりそこで生…

僕たちの戦争 萩原浩

新しい環境に順応しようとしたとき、それまでの価値観に縛られない柔軟性が必要と思いますが、現代と第二次世界大戦中の若者がタイムスリップすると、どう順応していくのかという点で面白く読めました。現代人の健太が特攻までに至る心理は、結局愛する者を…

二郎は鮨の夢を見る

寿司職人の修行について、ホリエモンの考え方は理解できますが、 職人に適性があるとすれば、目の前にある自分の仕事に対し、誠実で妥協しないということだと思いました。 www.j-cast.com 職を決める時に、目の前に職人の世界があったからと言っても、誰もが…

神の島 沖ノ島 藤原新也 安部龍太郎

写真に力があるとすれば、専門家よりも専門知識のない一般人の方が単純に何かを感じられるのだと思います。心を揺さぶられる写真には、被写体や撮影テクニックだけでは伝わらないものが込められているような気がします。 そういう意味では、高名な写真家の信…

破獄 吉村昭

脱獄を繰り返した男の半生を描いた小説でした。特に昭和初期までの監獄からの脱獄は牢も看守の質も未熟で、まさに人知と体力の闘いの様子でした。 用意周到に脱獄する者は、ハンニバル・レクターのように知能が高いだけでなく体力も備えておく以上に、脱獄に…

よもぎ学園高等学校蹴球部 松波太郎

精神論を唱える女性のサッカー部監督は面白い設定でしたが、時間軸が飛躍する点は、エピローグのエピローグのような感覚で新しい感触でした。 よもぎ学園高等学校蹴球部 作者: 松波太郎 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2009/08/26 メディア: 単行本 クリ…

映画 日本の自転車泥棒

震災前の岩手沿岸、福島が、美しく寂しく写されています。 杉本哲太の自転車に乗る姿勢がきれいで、自然の中を自転車で走り抜けるシーンはとても気持ちよく見ることができました。 日本の自転車泥棒 [DVD] 出版社/メーカー: フロンティアワークス 発売日: 20…

教団X 中村文則

人の個人的な思考の世界と公の行動の境界線を行ったり来たりする感覚の小説でした。 同じように原始的で個人的な閃きや発想があって、単なる思考から思想へと発展する流れは同じでも、それを人に伝えて発展していく段階で、道は大きく変わるのだと思いました…

一刀斎夢録 浅田次郎

武田鉄矢は新選組が嫌いだということですが、それは龍馬を軸に見てのことだと思います。 薩長の史観教育によれば、幕府側の新選組は悪ということになりますが、その理論で言えば、国に戦いを挑んだ西郷も悪となるところ、そうではないところに何かが潜んでい…

ダイナー 平山夢明

食べ物を主軸とした小説は、読者に食べてみたいと思わせる表現ができるかというのが一つの基準であるとすれば、本書のボンベロのハンバーガーには強烈に惹かれました。 一方で、匂いや食感が刺激されるとすぐにグロい表現によって食欲が減滅させられる繰り返…